磨くか、磨かないか。
塗膜研磨の本質とコーティング品質の関係
コーティング専門店にとって、「磨き(塗膜研磨)」は最も重要で、同時に誤解されやすい工程です。
どの店でも“磨いている”ように見えても、その中身とレベルは大きく異なり、
仕上がり・耐久性・資産価値に決定的な差を生みます。
しゃかりきでは、自社の磨き工程を定期的に再検証し、
「塗膜を磨かないことの意味」「磨くことの意味」を科学的に確認し続けています。
このページでは、
- なぜ磨きを再確認し続けるのか
- 塗膜を「磨かない」メリット・デメリット
- 塗膜を「磨く」メリット・デメリット
- 専門店としての最適な判断軸
を整理しながら、「愛車にとって本当に正しい選択」を一緒に考えていきます。
- 新車=完璧な塗装面、ではない
- 磨きは“傷をつけて、より細かい傷で均す行為”である
- 磨く・磨かないは、塗膜を理解したうえで選ぶべき「戦略」
なぜ、私たちは「自社の磨き」を再確認し続けるのか
塗装は、一台ごとに状態が異なります。
- 製造ラインでの塗装ムラや肌の違い
- 工場〜港湾〜販売店までの輸送中につく微細な傷
- 保管環境による劣化やシミ
- 納車後の洗車傷・オーロラ・擦り傷
こうした“塗膜の個性”を理解し、その都度最適な工程を選ばなければ、
どんなに高性能なコーティング剤を使っても、本来の力は発揮されません。
さらに、磨きは「塗膜を削る=リスクを伴う行為」でもあります。
職人の感覚だけでなく、
- 塗膜厚の測定
- 研磨前後の肌状態・艶・光沢値の比較
- ポリッシャー/バフ/コンパウンドごとの影響の可視化
といった科学的な裏付けがあって初めて、「本当に守れる磨き」が成立します。
しゃかりきの研磨は、この検証を前提にした“再現性のある研磨”です。
塗膜を「磨かない」選択肢のメリット・デメリット
磨かないメリット
1. 塗膜を減らさないためリスクが小さい
磨き=塗膜を削る行為です。
クリア層は車の「最後の防波堤」であり、安易な研磨は寿命を縮めるリスクがあります。
あえて磨かないことで、塗膜厚を温存できるのは大きなメリットです。
2. 低コスト・短時間で施工できる
研磨工程を省略すれば、人件費・作業時間は大きく削減できます。
「予算を抑えたい」「そこまで求めない」というケースでは、選択肢の一つになり得ます。
3. 新車かつ状態が良好な個体では成立する場合もある
一部の新車で、塗装肌・傷・シミがほとんど見られない個体も存在します。
そうした車両に対しては、あえて研磨を最小限に抑える判断が有効なこともあります。
磨かないデメリット
1. コーティングの密着・耐久が不安定になる
塗膜表面の凹凸・汚染・微細な傷が残ったままだと、コーティング被膜は「不均一な土台」の上に乗ることになります。
結果として、
- ムラ・曇り
- 部分的な撥水低下
- 早期の劣化
といった不具合が出やすくなります。
2. 洗車傷・オーロラ・シミがそのまま残る
コーティングは「透明な膜」です。
下地が荒れていれば、その荒れはコーティング越しにそのまま見えます。
特に黒や濃色車では、磨かない選択は仕上がりの美観を大きく損なう結果につながります。
3. 長期的には“損な選択”になることが多い
初期コストを抑えても、
「思ったほど綺麗にならない」「すぐにシミだらけ」
となれば、再施工や再コーティングが必要になり、トータルでは高くつくことも少なくありません。
塗膜を「磨く」選択肢のメリット・デメリット
磨くメリット
1. 塗膜表面を平滑化し、コーティング性能を最大化できる
研磨の本質は、「傷をつける行為の連続で、目に見えないレベルまで整えていくこと」です。
荒い傷を、より細かい傷で均一にし、最終的に人の目には“鏡面”として映るところまで仕上げます。
この平滑な下地にコーティングを乗せることで、
密着性・撥水・艶・耐久性など、あらゆる性能が最大限に引き出されます。
2. 洗車傷・オーロラ・シミ・白ボケを限界まで減らせる
研磨により、洗車傷・磨き傷・オーロラ・軽度のシミを大幅に軽減できます。
濃色車・202ブラックのようなシビアな塗装ほど、この差は歴然です。
3. 本来の色味・艶が蘇り、資産価値が高まる
適切な研磨は、塗装本来の発色・深み・透明感を引き出します。
これは単なる“ツヤ出し”ではなく、車そのものの価値を底上げする行為です。
4. PPF(プロテクションフィルム)の下地として理想的
近年主流になりつつあるPPF(プロテクションフィルム)施工でも、
下地の平滑さはフィルムの透明感・密着性・歪みのなさに直結します。
研磨された塗膜は、PPFの性能をも引き上げます。
磨くデメリット(だからこそ専門店が必要)
1. 塗膜(クリア層)が確実に薄くなる
どれだけ丁寧に磨いても、「まったく削らない研磨」は存在しません。
必要以上に削れば、将来の補修・再研磨の余力を奪ってしまいます。
しゃかりきでは、塗膜厚を測定しながら“必要最小限の研磨量”に徹しています。
2. 技術差が極端に出る工程であり、リスクも大きい
磨きを甘く見る施工店ほど、
- バフ目だらけ
- 焼き付き
- オーロラ量産
- 過研磨によるクリア層の薄利
といったトラブルを生みがちです。
研磨は「機械を当てていれば上手くなる」類の作業ではありません。
3. 時間・コストがかかる
高度な研磨には、経験・設備・時間が必要です。
しかし、ここを削ってしまうと、コーティングそのものの価値を落とすことになります。
結論:磨く/磨かないではなく、「塗膜を理解して選ぶ」ことが正解
正解は、「必ず磨く」「絶対に磨かない」の二択ではありません。
大事なのは、
- 塗膜の厚み・状態
- 色(特に黒・濃色かどうか)
- 使用環境(屋内/屋外保管・走行環境)
- どれくらいの期間、どのレベルの美観を維持したいか
といった条件を踏まえ、一台ごとに「磨きの強さ・量・範囲」を設計することです。
しゃかりきでは、
- 塗膜厚計による測定
- 肌状態の目視・照明下でのチェック
- お客様の乗り方・保管環境のヒアリング
を行った上で、
「磨かない方が良い部分」「最小限だけ磨く部分」「しっかり磨くべき部分」を丁寧に切り分けてご提案します。
自分の車は「どこまで磨くべきか?」一度プロに相談しませんか。
「新車だけど磨いた方がいい?」「黒だからしっかり磨きたい」「PPF前提で下地を整えたい」
そんなご相談は、すべて大歓迎です。
施工メニュー・価格の目安は、
▶ 料金表ページ をご覧ください。
具体的な塗膜状態や、他店施工後のやり直しなどについては、
写真を送っていただければ、ある程度の方向性を事前にお伝えすることも可能です。
まとめ:磨きは「ツヤ出し作業」ではなく、「未来の価値を決める設計」
磨きは、ただ艶を出すための飾りではありません。
塗膜をどう活かし、どう守り、何年先まで価値を残すかを決める“設計行為”です。
塗膜を理解せずに「とりあえず磨く」「とりあえず磨かない」を選んでしまうと、
そのツケは数年後の見た目・再施工コスト・リセールバリューとなって返ってきます。
しゃかりきは、
「塗膜を削り倒す研磨」でもなく、「何もしない安全策」でもない。
一台ごとに最適なバランスを設計し、
お客様と一緒に愛車の未来をつくっていく専門店であり続けたいと考えています。
磨くか、磨かないか――。
その答えは、いつも「あなたの車と、あなたの価値観」の中にあります。
その最適解を見つけるお手伝いを、私たちにさせていただければ幸いです。